結婚して四半世紀も経とうというのに、数か月前、私は夫がわからなかった。
アラ還ともなると仕事から帰るともう夕飯を作りたくない日が度々あり、その日は半年に一度くらいならとハンバーガー店に立ち寄った。すると、列に並んでいる私の前にトコトコと割り込んできた人がいた。なんて図々しい、と思ったらこちらに顔を向けてくる。とっさに、オーダーの列ですか、とかなんとか聞いてくるのかと思いきや「あのさ」と馴れ馴れしいではないか。しかしよくよく見るとそれは自分の連れ合いであった。彼は有給休暇をとって趣味のスポーツに行く途中、たまたま駅前で私を見つけて自分の好きなメニューを買わせたかったらしい。そもそも私は彼が休みなことも知らされていなかった!!!
という具合で、銀婚式でも私たちにはあ・うんの呼吸も何もない。
それこそ、「ほら、あれがさ」と言われると「だから何?」という具合である。
年齢もあって固有名詞が出てこないので、会話が進まない事はなはだしい。
それでも25周年を迎えた。何か所か転勤で引っ越しもし、子供も生まれ、家も買った。
子供も社会人になった。
昨今は結婚に求めるものも様々になってきているようだ。
私たちはその先駆けみたいなものだったかもしれない。
当時としては高齢な部類で、すぐに意気投合したとか、真っ逆さまに恋に落ちた、とかはなかった。ただ、お互いに結婚して、家族になって、何かが起きても必ず味方でいてくれる人がいて、すぐに投げ出さずに長続きするよう努力する気があって、じゃれ合ってもいい人が欲しい点は共通していたかなと思う。
色々あったけれどここまでなんとか一緒にやってきた。
人によって求めるものは違うからこうだという決まりはないけれど、その基本が一致している相手を見つけるのが大事かな、と思う。
とはいえ、趣味や気性が似ているもの同士の夫婦は羨ましいな、と今でも時々は思うけれど。
それでも望んだとおり夫婦として一緒に人生を分かち合う人がいることに、感謝。